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多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome,PCOS)

2022.7.7 妊活レッスン

妊娠適齢期の女性の約10-20%に発症すると言われています。
アメリカとヨーロッパの生殖医学会によりますと、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は下記の3つの基準の項目を満たせば多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome,PCOS)と診断されます。


✔無排卵や無月経で生理不順。
✔LH(黄体形成ホルモン)が高値で、FSHが正常またはテストステロン高値(男性ホルモン)のいずれかがある。ニキビ、多毛、低音声などは男性ホルモンの過剰による男性化の症状です。
✔経腟エコー検査では卵巣内に発育していない(2-9MM)卵胞がたくさんみられる、各卵巣当たり12個を超える卵胞(多嚢胞性卵巣)、卵巣実質の周囲に小さな卵胞が1列にずらりと並ぶ「ネックレスサイン」(Necklace sign)と呼ばれる典型的な所見がある。


また、クッシング症候群(同様の症状を起こす可能性がある)がないか確認する血液検査を行うこともあります。


【原因】

遺伝的な要因も指摘されてはいますが、疾患を引き起こす明らかな遺伝子の異常は報告されておらず、一般的な遺伝性の病気ではないとされています。
男性ホルモンを高くさせている原因は、脳から出ているLH(黄体形成ホルモン)と血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用です。それらが正常より強く卵巣に作用していて男性ホルモンが局所的に上がっていると考えられています。
また血糖値を下げるホルモンであるインスリンもPCOに関連しており、インスリン抵抗性(高インスリン血症)があると、男性ホルモンが増加します。男性ホルモンは卵胞の発育を抑制し、卵巣の外側の膜を厚くすることによって排卵を妨げます。


【検査方法】

✔超音波検査
80%以上のPCOSの方には、超音波検査で多嚢胞性卵巣(Polycystic ovary)が見られます。
✔ホルモンの測定
1.黄体形成ホルモン(LH)が高値で、FSHが正常(重症の場合には、3:1。
2.テストステロン高値(男性ホルモン)。
3.AMH(アンチミューラリアンホルモン):>5の場合、PCOSの可能性もあります。


【治療】

多嚢胞性卵巣症候群には、大きく分けて、妊娠の予定に基づいて排卵障害からもたらされる不妊に対する治療と、病気の原因(症状の種類と程度)に対する治療があります。
なお、肥満を伴う患者さんは、減量により月経不順の改善を認めることが知られています。体重が過剰な場合は、食事内容等のライフスタイルの改善を行いましょう。


妊娠を希望していない場合

ホルモン療法を行うことで月経不順、無月経など排卵障害の改善を図ります。また、月経不順や無月経を治療せずに長期間放置していると、子宮内膜に異常が生じ、子宮内膜増殖症や子宮体がんが発生することもあります。


妊娠を希望する場合

PCOSの患者さんは排卵に問題があることが多いため、排卵誘発剤を用いて、人工授精や体外受精を受けることにより、早い段階で妊娠する可能性が高いといえるでしょう。